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セキュリティ関連

AI支援攻撃でAWS環境に8分で侵入成功

AIが攻撃者の“スピードと精密さ”を増幅させた時代

2025年11月28日、衝撃的なクラウド侵害事件が発生しました。ある企業のAmazon Web Services(AWS)環境が、たった8分で完全に侵害されたのです――ただしこれは旧来の“クラッカーの腕前”だけによるものではありませんでした。侵入を支えたのは、人工知能(AI)、とりわけ大規模言語モデル(LLM)による自動化と意思決定支援だったとセキュリティ研究チームは報告しています。
この事件は単なる偶発的な事故ではなく、AIがサイバー攻撃の“力の乗数”となっている現在の脅威動向を象徴しています。

8分でAWS管理者アクセス──どうやって?

攻撃のきっかけは、ごくありふれたミスでした。クラウドストレージサービスのAmazon S3に置かれたバケットが誤って公開状態になり、そこに企業の有効なアクセスキーが含まれていたのです。誰でもアクセスできる状態のこのバケットは、攻撃者にとって最初の「足がかり」となりました。
しかし驚くべきはその後です。単純な侵入で終わらず、攻撃者はその資格情報を使って以下のような複雑なステップを一気に実行しました:

  • AWSリソースの偵察
  • Lambda関数のコードを書き換えて権限昇格
  • 複数のIAMユーザー/ロールへの横移動
  • 管理者権限の取得
  • 高性能GPUインスタンスの悪用やAIモデルへのアクセス
  • 約19の異なるAWSプリンシパル(権限主体)へのアクセス

これら一連 of プロセスが、わずか8分足らずで完了してしまったのです。従来の侵入では数時間から数日かかる工程が、AIに支えられたことで濃縮され、一瞬の攻撃となってしまいました。

AIはなぜ“加速装置”になるのか

ここで注目すべきは、攻撃自体が単なる“早業”ではなく、AIモデルの能力をフルに活用して展開された点です。研究者によれば、攻撃中に使われたコードには複数の言語生成モデルの影響が認められ、AIがリアルタイムで偵察、コード生成、意思決定を支援した形跡があるとされています。
従来の攻撃者は、自らツールを使いこなし、手動で状況判断を繰り返す必要がありました。それが今回の事案では、AIが:

クラウド環境のリソース名や構造を分析する
攻撃に最適なコード(Pythonなど)を自動生成する
横移動や権限昇格の最適手順を即座に計算する

などを瞬時に行っています。AIが攻撃の「頭脳」となったことで、攻撃の自動化とスピードが劇的に向上したわけです。
つまりAIは攻撃者の“加速装置”になりうるという現実が、ここに突きつけられました。

なぜ防御側は追いつけないのか

従来のセキュリティ対策は、ルールベースの検出や署名ベースの防御、ヒューリスティックな行動分析に依存することが多く、攻撃の速度や多様性が急激に高まると、どうしても対応が後手に回るリスクを抱えています。
今回のようなAI支援攻撃は、以下の点で防御側を困難な状況に追い込みます:

  • 侵入から権限昇格までが短すぎて検知や遮断が間に合わない。
  • 攻撃の手口がAI出力に基づくため、既存ルールで識別が難しい。
  • コード生成や移動経路が動的で、攻撃シグネチャが固定化できない。

その結果、クラウド環境の防御は“速度戦”になりつつあります。攻撃者はAIを使って高速に侵入パスを模索し、防御側はそれをリアルタイムで検出して阻止しなければならない。このギャップが今の脅威状況なのです。

根本的な教訓:基本が最大の防御になる

今回の事件で強調されるのは、AIによって攻撃が進化したという事実だけではありません。その背後にある人間的なミス=クラウド資産の誤設定が侵入のトリガーになったという点です。
クラウド環境における基本的なセキュリティ対策――

  • IAM(Identity and Access Management)の最小権限原則
  • S3バケットやその他リソースの適切なアクセス制御
  • 定期的な資格情報のローテーション
  • セキュリティ監査とログ監視

――これらが徹底されていなければ、どれだけ高度な防御システムを導入しても、入り口を塞ぐことはできません。
あるセキュリティ専門家は、「有効な鍵を公衆の前に置いておきながら、最新の錠をつけても意味がない」と指摘していますが、この例はまさにそれを象徴しています。

AI時代の防御の再設計

このような攻撃を防ぐには、従来の脆弱性管理や侵入検知だけでは不十分であり、**AI時代の防御アーキテクチャが求められています。**具体的には:

■ “AIを使う側”としての防御AI導入
AIを守りの側に取り入れ、侵入検知、異常検知、自動対応を行う。攻撃者のAIに対抗できる防御AIが鍵となる。

■ リアルタイムな可観測性と検出
権限昇格や横移動といった攻撃パターンを早期に把握し、即時遮断につなげるためのログ分析・行動分析の強化。

■ クラウドネイティブセキュリティの強化
IAMやネットワークポリシー、ワークロード保護などクラウドのネイティブ機能を“正しく”設計・運用すること。

■ 定期的な脅威シミュレーションと演習
攻撃側の速度や手口が変わる中、現実的な侵入シナリオを想定した侵入テストや演習が不可欠になる。

現実には、多くの企業や組織がこうした対策をまだ十分には整えていません。AI支援攻撃は今後も増えていくことが予想され、セキュリティの姿勢そのものを見直す必要があるのです。

おわりに

今回の事件は、AIが単なる便利なツールであることを超え、攻撃のツールとしても既に実戦投入されていることを明確に示しました。しかも、その速度は従来の防御メカニズムを追い越してしまうレベルに達しています。
しかしこの状況は、「逃げるべき恐怖」ではなく、新たな防御戦略を構築する機会でもあります。AIを理解し、攻撃の仕組みと防御の仕組みを同時並行で進化させることが、これからのクラウドセキュリティにとって必要不可欠な視点となるでしょう。

AIは攻撃者の味方にもなる。
だからこそ、防御側もAIを武器にして戦わなければならない時代が来たのです。

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