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システム開発

社内SEがいない会社のIT運用、外部に任せる仕事・残す仕事

社内SEがいない会社のIT運用、外部に任せる仕事・残す仕事

最終更新

この記事の要点

  • 社内SEがいない会社のIT運用は「作業」を外部委託し「決定」と管理者権限は自社に残すのが基準
  • 応急処置として使用中の機器・サービスと契約先・連絡順を一枚にまとめると穴が見つかる
  • 月30分の定例と記録の共有場所を決めれば担当者や委託先が変わっても運用が止まらない

「パソコンの調子が悪いんだけど、誰に聞けばいい?」──社内でそう言われて、総務や経理の担当者が本業の手を止めて対応している。ルーターやサーバーは何年も前に設定したまま、仕組みを知っているのは退職した前任者だけ。こうした状態は、社内にSE(システムエンジニア)がいない会社ではめずらしくありません。問題は「困っている」ことではなく、「誰が何を見るのか」が決まっていないことにあります。

1. 「詳しい人」に頼るIT運用が限界を迎える原因

原因の一つ目は、IT業務が「仕事」として定義されていないことです。売上や納品に直接つながらないため、誰かの「ついで」で回され、担当者が変われば引き継がれません。担当者本人も「自分の本来の仕事ではない」と思っているので、手順を残す動機が生まれにくいのです。

二つ目は、範囲が広すぎることです。パソコンの不調、メールやクラウドサービスのアカウント管理、ネットワーク機器、業務システム、セキュリティ対策。これらはそれぞれ別の専門分野で、一人のSEでも全部に強いわけではありません。兼任の担当者が「全部わかる人」になれないのは当然です。

三つ目は、業者との関係が「壊れたら呼ぶ」だけになっていることです。普段のやり取りがないため、いざ障害が起きたときに自社の構成を説明できる人がおらず、復旧に時間がかかります。外部に頼んでいるつもりで、実は何も任せられていない状態です。

問題は担当者の能力ではなく、IT業務の「範囲」と「責任の所在」が決まっていないことにある。

2. 今週中にできる応急処置:使っているものと連絡先を一枚にまとめる

根本的な見直しの前に、今週中にできることがあります。それは「今、何を使っていて、困ったら誰に連絡するか」を一枚にまとめることです。専門知識は不要で、兼任担当者と経営者が半日あれば作れます。書く項目は次のとおりです。

この一覧を作る過程で、「契約先が分からない」「管理者パスワードを誰も知らない」「このサーバーは何に使っているのか不明」といった穴が必ず見つかります。穴が見つかること自体が成果です。見つかった穴は、後で外部に相談するときの最初の相談項目になります。

  • 使っているサービス・機器の一覧(パソコン、ルーター、サーバー、メール、会計・販売などの業務システム、クラウドサービス)
  • それぞれの契約先・サポート窓口・契約更新日
  • 管理者アカウントのIDと、パスワードの保管場所(パスワード自体は一覧に書かず、保管場所だけ書く)
  • 障害が起きたときの連絡順(まず社内の誰に、次にどの業者に)
  • 前任者だけが知っていた設定や癖(分かる範囲でよい)
まずは「何を使っていて、困ったら誰に連絡するか」の一覧を作る。穴が見つかるのが目的。

3. 外部に任せてよい仕事・自社に残すべき仕事の分け方

一覧ができたら、業務を「外部に任せてよいもの」と「自社に残すべきもの」に分けます。判断の軸は二つ、「専門性が必要か」と「自社の判断が必要か」です。専門性が高く、判断が要らない仕事は外に出す。会社としての判断が要る仕事は中に残す。この基準で分けると、おおむね次のようになります。

外部に任せてよい仕事は、サーバーやネットワーク機器の設定変更・監視・バックアップの確認、パソコンの初期設定やOS・ソフトウェアの更新管理、ウイルス対策や脆弱性診断(システムの弱点を検査すること)といったセキュリティ対策の運用、業務システムの保守・障害対応・改修、新しいサービスを導入するときの技術的な比較や検証です。いずれも専門性が高く、手順が決まれば誰がやっても結果が変わらない仕事です。

大事なのは、「作業」は任せても「決定」と「所有」は手放さないことです。管理者アカウントを業者に預けきりにすると、業者を変えたいときや契約が終わったときに、自社の資産を自社で触れなくなります。逆に、判断まで業者に委ねると、会社の都合ではなく業者の都合でシステムが決まっていきます。

  • 【自社に残す】何に、いくらまで、何のためにITを使うかの決定
  • 【自社に残す】管理者権限の所有者であること(作業は委託しても、権限の持ち主は会社)
  • 【自社に残す】アカウントの発行・停止の判断(入社・退職・異動のたびに必ず発生する)
  • 【自社に残す】業務手順そのものの整理(どの作業を誰がどの順番でやるか)
  • 【自社に残す】外部委託先との窓口担当を一人決めること
「作業」は外へ、「決定」と「所有」は中へ。管理者権限の持ち主は必ず自社にする。

4. 再発させない仕組み:月30分の定例と記録の置き場所

一度整理しても、半年放っておけば元に戻ります。再発させないコツは、月に一度、短い定例の時間を持つことです。兼任担当者、経営者(または決裁者)、外部委託先の三者で、30分程度で十分です。確認する項目を固定しておくと、準備なしで回せます。

もう一つは「記録の置き場所」を決めることです。対応の履歴、設定の変更、業者とのやり取りは、個人のメールではなく、社内で共有できる場所に残します。形式は簡単な文書で構いません。これがあるだけで、担当者が変わっても、委託先が変わっても、ゼロからの説明をしなくて済みます。

記録が積み上がってくると、「このトラブルは毎月起きている」「この作業は外に出したほうが安い」といった判断ができるようになります。運用の仕組みは、守りのためだけでなく、次の改善を決めるための材料にもなります。

  • 先月起きたトラブルと対応内容の振り返り
  • 入社・退職に伴うアカウントの追加・停止が漏れていないかの確認
  • バックアップが正常に取れているかの確認
  • 機器やソフトの更新、契約更新日の確認
  • 次に取り組む改善項目を一つ決める
月30分の定例と、共有できる記録の置き場所。この二つで整理した状態を保つ。

5. よくある失敗と、外注先を選ぶときの注意点

よくある失敗の一つ目は、「全部お任せ」にすることです。一見ラクですが、社内に窓口担当がいないと業者からの確認が放置され、結局何も進まなくなります。外部に任せる範囲が広いほど、社内の窓口ははっきりさせる必要があります。

二つ目は、担当者を一人に固定したまま、情報がその人の頭の中にだけある状態を続けることです。外部委託は「人が変わっても回る」ようにするための手段であって、属人化(特定の人しか分からない状態)を別の人に移すだけでは意味がありません。

外注先を選ぶときは、「聞いたことにその場で技術者が答えてくれるか」「作業後に何をしたかを書面で残してくれるか」「自社が管理者権限を持つ前提で進めてくれるか」の三点を確認してください。見積もりの安さより、説明と記録の丁寧さのほうが、長い目で見ると差が出ます。

外部に任せるほど、社内の窓口と記録が要る。「全部お任せ」は任せたことにならない。

データで見る中小企業のIT運用実態

総務省「令和6年通信利用動向調査」(2025年公表)によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は80.6%で、過去10年でおよそ倍増している。メールもファイル共有も業務システムも社外のサービスに移り、社内に置かれた機器だけを見ていれば済む時代は終わった。管理すべき対象が増えたのに、見る人が決まっていないというずれが、兼任担当者の負担として表れる。

一方で、成果の出方には差がある。総務省の同調査ではクラウドの効果が「あった」と回答した企業は88.2%にのぼるが、日本政策金融公庫「デジタル化に取り組む中小企業の実態に関する調査」(2025年公表、4,328社回答)では、デジタルツールの導入により業績全体で成果が上がっている中小企業は45.7%にとどまる。道具を入れた実感と、業績まで届く成果は別物だということだ。読者の会社で判断すべきは「何を入れるか」ではなく、入れたものを誰が見て、誰が止める・変えると決めるかである。

同じ日本政策金融公庫の調査(2025年公表)では、デジタル化に「積極的に取り組んでいる」中小企業は43.6%だった。半数以上はそこまで踏み込んでいない。だからこそ、まず一覧を作って範囲を確かめる段階から始めてよい。

  • クラウド利用80.6%(総務省・令和6年通信利用動向調査、2025年公表)——管理対象は社内機器の外に広がっている
  • 効果が「あった」88.2%に対し、業績全体で成果45.7%(日本政策金融公庫、2025年公表)——導入と定着は別に管理する
  • 積極的に取り組む中小企業は43.6%(同調査)——出遅れ感より、契約先と管理者権限の把握を先に固める

出典

※ 2026年9月12日 に公的統計をもとに追記しました。

まとめ

社内にSEがいなくても、IT運用は回せます。条件は、「作業は外部に任せてよいが、決定と所有は自社に残す」という線引きをはっきりさせることです。そのうえで、誰が窓口になり、どこに記録を残すかを決めれば、担当者が変わっても止まらない運用になります。最初の一歩は、今使っている機器・サービス・連絡先の一覧を一枚作ること。それだけで、次に相談すべき相手と内容が見えてきます。

一覧を作ってみて「自社だけでは手が回らない」と感じた方は、社内SE業務の委託のページで、外部に任せられる業務の範囲を確認してみてください。前任者が作ったシステムの仕組みが分からず止まっている場合は、システムの引き継ぎ(保守移管)も参考になります。いずれも技術者が直接お話を伺います。

By Affelhansa Strategic Research

よくある質問

社内SE業務を外部に委託すると費用はどれくらいかかりますか
記事では具体的な金額には触れていませんが、費用を考える前提として、まず「今使っている機器・サービス・契約先の一覧」を作ることをおすすめします。任せる範囲(監視・更新管理・障害対応など)が決まらないと見積もりの比較ができないためです。なお、見積もりの安さよりも、説明と記録の丁寧さのほうが長い目で見ると差が出ます。
社内に詳しい人がいなくても自社だけでIT運用を整理できますか
最初の整理は専門知識なしでも進められます。使っている機器・サービス、契約先、管理者アカウントの保管場所、障害時の連絡順を一枚にまとめる作業は、兼任担当者と経営者が半日あれば作れます。その過程で「契約先が分からない」「管理者パスワードを誰も知らない」といった穴が見つかったら、それが外部に相談する最初の項目になります。
IT業者に任せるときに絶対にやってはいけないことは何ですか
管理者権限を業者に預けきりにすることです。権限の持ち主が自社でないと、業者を変えたいときや契約が終わったときに、自社の資産を自社で触れなくなります。また、社内に窓口担当を置かない「全部お任せ」も、業者からの確認が放置されて結局進まなくなるため避けてください。

監修株式会社アッフェルハンザ

千葉県柏市のIT会社。業務システム開発、Excel・AccessのWebシステム化、スマレジ連携・API開発、ホームページ制作・保守、ネットワーク構築、脆弱性診断まで、技術者が直接対応しています。

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